次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚文化
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    のいただきます。

宮城県漁業協同組合佐藤 寛 さん

みやぎサーモン

風光明媚なリアス式海岸が連なる宮城県北部の太平洋岸は、国内養殖ギンザケの約85%を生産します。この国産サーモンの聖地にある宮城県漁業協同組合の経済事業部 流通推進課 課長 佐藤寛さんにお話を聞きました。

宮城県漁業協同組合について教えてください。

宮城県では平成19年に県下の31漁協が1つになって宮城県漁業協同組合という組織になりました。これは当時も今でも全国的に珍しい取り組みでしたね。現在は県漁協の28支所3出張所に正・準組合員合わせて1万人以上で構成されています。その中で、県漁協では主に養殖業による魚介類生産を管轄しています。

主な取り扱い水産物はどのようなものですか。

秋から冬にかけて収穫するノリの養殖は、江戸時代に気仙沼から始まり、県の中部や南部に広がっていきました。松島を中心にした全国的にも有名なカキは、生のものは9月末から5月頃が旬です。他にも、ワカメは2月から春先にかけて美味しい時期を迎えますし、初春から夏にかけて収穫されるホヤも産地で食べる新鮮なものは旨味がたっぷりで、ぜひ味わってみて欲しいですね。そして、ギンザケは春の訪れとともに3月頃から水揚げが始まります。養殖ものでは他にホタテやコンブなども盛んです。

宮城県の水域はどのような特徴がありますか。

県北部の太平洋岸は三陸海岸の南端に位置し、海と山が非常に近い地形となっています。これは、山のミネラルをたっぷり含んだ水が流れ込み、海水と混ざり合って豊富なプランクトンが発生する環境が整っているということです。さらに、この地域は林業も盛んで、山をしっかりと守ることが海を育てることに繋がるという考えで取り組んでくれています。入り組んだリアス式海岸の地形が静穏域を作り出し、波が穏やかで水温が一定しているということも養殖に適している大きなポイントです。世界三大漁場と呼ばれる金華山沖の豊富な漁獲種とあわせて、非常に多彩な海産物が生産できるエリアです。

養殖ギンザケについて教えてください。

宮城の海の環境が適していたこともあり、昭和50年代初頭に現在の南三陸町でギンザケの養殖がスタート。国内におけるギンザケの海面養殖発祥の地として40年以上にわたり様々な改良を重ね、現在でも宮城県産が国内生産量の85%以上を占めています。一番の大きな転換期は平成8 年にEP 飼料を導入したことでした。高品質の魚粉や大豆、ミネラル類を含む100%人工配合飼料であるEP 飼料を与えることで、生餌由来の生臭さがなくなり、刺身などの生食用サーモンとしてとても美味しく食べられるよう劇的に変化しました。その後、飼料に宮城県産米を配合するなど、農業との連携も図りながら品質の向上に努めています。

宮城県産米の飼料と宮城の海で育てた「みやぎサーモン」を宮城県産木材でスモークした加工品なども開発。

「みやぎサーモン」とはどのようなものですか。

宮城県産ギンザケの中でも、活け締め・神経締めを施し、より高品質・高鮮度を保って処理された最高級ブランドを「みやぎサーモン」としてGI マーク(地理的表示保護制度)を取得しています。みやぎサーモンは県内及び周辺エリアの山で卵から稚魚になるまで飼育され、その後、海の生簀で大切に育てられます。生産から出荷まで全工程を生産者が管理し、トレーサビリティを確保。安心・安全な生産体制が整備された食材となっています。

緊急事態宣言による影響はありましたか。

2011年の東日本大震災で県内の養殖業は大変なダメージを受けました。その影響がまだ残っている中でのコロナ禍ですので、非常に厳しい状況ではあります。しかしながら、ギンザケについては7 ~ 8割がスーパーなどへの出荷だったため、比較的順調に推移していますので、この「みやぎサーモン」を牽引役として、県内の養殖業を盛り上げていきたいですね。

豊潤な森をたたえた山からの近さ、複雑に入り組んだリアス式海岸の地形が水産業に最適な環境となる。

生産者×シェフ SPECIAL INTERVIEW