次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚文化
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    のいただきます。

ねじめ漁業協同組合炭之 原浩章 さん

ねじめ黄金カンパチ

養殖カンパチの生産量で日本一を誇る鹿児島県。主に鹿児島湾の東岸にある大隅半島で養殖が盛んですが、南大隅町根占の地で「ねじめ黄金カンパチ」を全国に出荷している、ねじめ漁業協同組合さんに養殖のこだわりやコロナ禍の影響を聞いてみました。

ねじめ漁業協同組合のある海域について教えてください。

ねじめ漁業協同組合は、鹿児島県の大隅半島の西側、霧島屋久国立公園区域内に位置し、鹿児島県本土最南端佐多岬の近くにあります。漁場的には南から養分や酸素を豊富に含んだ黒潮が入り、1番始めに大隅半島の内側に潮があたって湾の奥の方に流れていくので、魚にとってはいい環境です。その代わり、潮が強いので、養殖の施設を強固にしないといけません。夏場の台風と冬場のシケは特に気をつけないといけませんが、その分、いい魚ができます。一般の漁では、春先にはマダイ、4月後半から6月までは鹿児島特産のキビナゴ、8月から10月にかけてバショウカジキなどが獲れます。養殖ですと、カンパチの他にヒラマサやブリなども行なっています。

いつからカンパチの養殖が始まったのでしょうか。

養殖自体は昭和63年にブリから始まりました。その後、全国的にブリ養殖が過剰になりすぎて、平成8年にカンパチに変更し、現在9つの漁業者が取り組んでいます。年間約70万尾を出荷しています。カンパチ養殖の全国シェアは鹿児島県が6 割弱を占めていて、全国1位です。鹿児島県の中で、ねじめ漁業協同組合は2 割ぐらいのシェアとなります。通年出荷していますが、量が1番多いのが夏で、7割弱はこの時期です。

カンパチの養殖はどのような方法で行なわれているのですか。

港から1km弱のところで養殖を行なっています。沈下式生簀といって、シケがある時は、潜水艦のように生簀を沈ませて、魚が傷まないようにしています。飼料は、養殖業者さんがそれぞれ工夫をしていますが、冷凍の魚と配合飼料を与えています。環境のことも考えて、エサを与えすぎて排泄物が多くなりすぎないように注意はしています。

黄金色に輝いて見える「ねじめ黄金かんぱち」は、味はもちろんのこと見た目も美しい。

こちらのカンパチは「ねじめ黄金カンパチ」として出荷されていますが、その魅力を教えてください。

養殖期間1年以上で、根占で養殖することをねじめ黄金カンパチのルールとしています。平均して、重さ3.5~4kg、大きさ60cm~70cm のものとなります。ねじめ黄金カンパチは、身質がよく、色変わりが少なくて、ほどよい甘みがあります。私個人的には1日目、2日目は刺身で食べます。1日目は薄く切って歯ごたえを楽しみ、2日目は厚めに切って甘みを楽しみます。
3日目まで残ったら寿司ネタというように、日にちによって食べ方を変えて楽しんでいます。2日目が1番美味しいですね。

緊急事態宣言の影響はありましたか。

例年の45%弱ぐらいまで出荷量が下がってしまいました。影響が落ち着いたと思ったら、また次の波がやってきて、なかなか元に戻りません。顕著に出たのは2020年の7月ぐらいですね。始めはスーパーさんへ集荷する量が増えたのですが、ホテルや旅館、飲食店への出荷は減ったので影響は大きいです。

これからの課題を教えてください。

核家族化が進み、1人暮らしも増え、生活スタイルは大きく変化しています。今は魚を丸ごと1匹で出荷していますが、いずれはここで加工して、即座に食卓に魚を並べてもらえるようにすることを考えています。もっともっと子供たちにも食べてもらえるようにして、魚食文化を残していきたいですね。

根占は、温暖な気候をもつ鹿児島湾の中でも潮流が早く潮通しのよい好漁場だ。

生産者×シェフ SPECIAL INTERVIEW