次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚文化
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    のいただきます。

銀座 ふじやま藤山 貴朗 さん

甘鯛の松笠焼き

京都の名店で研鑽を積んだ銀座ふじやまの藤山さん。京料理には欠かすことができないという甘鯛を使ったレシピを紹介していただき、「食材そのものが印象に残るような料理を提供したい」という料理や魚についての思いを聞かせていただきました。

緊急事態宣言の影響を聞かせてください。

うちの店は2019年3月にオープンしたので、コロナで大変になった頃がちょうど1周年でした。特にイベントをするわけではなかったものの、予約は満席でした。ところが、コロナの影響があり、ほとんどキャンセル。不安になったことを覚えています。そこからは、お弁当やおもたせを販売したり、いろいろ試しました。4月、5月の売上は、なんとか昨年と同じくらいまでもっていけたのですが、その後はやはり落ち着いてしまいましたね。あの時どういう判断が正しかったのか、今でもわかりません。
ただ、来てくださるお客様がいる限りは、お店を営業しようと思っていました。僕らはやはり、漁師さんや生産する皆さんの生活を背負っていますから。料理をお皿にのせて提供することで、はじめて皆さんの生活が成り立つ。自分たちが頑張らないといけないという思いはありました。
2021年1月の緊急事態宣言下では、17時半からやっている営業を17 時からに変更しました。もっと早い時間をご希望されるお客様には、それより前から対応することもあります。宣言前と比べると売上は3 割程度下がっていますが、それでもこの状況でどう売上を立てていくか、日々試行錯誤しているところです。

今回ご活用いただいた甘鯛について、感想をお聞かせください。

今回いただいた甘鯛は、普段使っているぐじに比べて遜色ないものでした。こういう上質な魚が山口で獲れるというのはすごくいいですよね。ぐじは普段、酒蒸しや椀もの、焼き物、鮮度の良いものはお造りにもします。それから、鱗の部分を使うこともありますね。ぐじの鱗は柔らかくて美味しいです。今回のレシピは「ぐじの松笠焼き」といって、松ぼっくりに見立てた料理です。1 度揚げて鱗を立たせ焼き上げました。
通常捨てる鱗を活かしたやり方です。他に皮と鱗の間に包丁を入れて鱗を「すき引き」して鱗を唐揚げに仕立てるやり方もあります。鱗が柔らかい甘鯛だからこそできる料理です。

身はもちろんのこと、甘鯛の鱗の食感と香りを楽しむことができる「松笠焼き」は甘鯛ならではの料理。

料理における食材、そして魚についてどのような考えをお持ちですか。

僕の料理のモットーは「あまり装飾せず、素材そのものを活かす」。お客様に「あそこの甘鯛美味しかったね」と言ってもらえるような、食材そのものが印象に残る料理を目指しています。
だからこそ、食材の質はとても重要です。やはりフレッシュで状態の良いものを提供したいという思いもあります。状態の良いものっていうのはつまり、安全で手間暇かけてつくられたもののこと。魚で言うならば、漁師さんが上手に取り扱ってくれた上で、市場まで運んでくれたもの。特に鯛は直送されても使いづらいこともあって、市場で魚を落ち着かせて、しめてもらった方が美味しい場合もあります。直送であれば何でもいいわけではありません。魚はやはり日本料理の主役で日本人のDNAのようなもの。
状態の良い魚を仕入れて提供していきたいです。

漁業関係者の方にメッセージをお願いします。

今はコロナ禍で、どの業界も大変な時期ですよね。でも、僕はこんな世の中でも魚を使っていきたいと思っています。いい素材を提供してくれると、すごく嬉しいです。海が荒れて危険な時もあるとは思いますが、事故のないように頑張ってください。

SPECIAL INTERVIEW

銀座 ふじやま

藤山貴朗さん

東京都中央区銀座3-3-6 銀座モリタビル7F
TEL:03-6263-2435

京都府出身。名店「和久傳」室町、高台寺の店舗にて料理長、さらにグループの総料理長を務めた後、2019 年に「銀座 ふじやま」を開店。旬の食材をていねいに活かした料理が食通の舌をうならせている。

生産者×シェフ SPECIAL INTERVIEW