次世代へと引き継ぐ「美味しい」日本の魚文化
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    のいただきます。

かわ原川原 浩二 さん

戸石とらふぐ柚庵揚

ふぐを多く食べる文化のある大阪は梅田でお店を構える川原さんに、長崎県戸石産のとらふぐを使ったお料理をお願いしました。普段扱う食材とは違うものをどう活かしたのか、また、食材に対する考え方や魚の可能性についてお話をおうかがいしました。

緊急事態宣言の影響はどうでしたか。

うちは、お客様の年齢層が高いこともあり、なかなか戻ってきていないのが現状ですね。接待でご利用いただくことも多かったので、影響は大きいです。来客数でいうと、1度目の時は昨年比で40%ぐらい減り、2度目は50%以上減で前回よりも2回目の方が影響はありますね。

そのような状況の中で食材の取り扱いで工夫されたことはありますか。

魚にフォーカスをあてると、時代的には熟成、寝かすというのがあります。冬場だとクエやブリなど魚体が大きなものが多いですが、長時間お店においても質が下がらない大きいなものを選んでいますね。

ふぐを使ったお料理をお願いしましたが、普段からよく扱われる食材ですか。

やはりシーズンに入ると、よく使いますね。大阪では「福を喰らう」ということで、年明けから縁起ものとして食べていただいています。関西はふぐをたくさん食べる文化ですから、なくてはならないものです。白子を使う料理、てっさ、焼き物、スープなど、可食部が多く、全て使うことができる食材ですね。

今回使っていただいた長崎県戸石産のとらふぐの印象はいかがでしたでしょうか。

普段お店で使っているのは2kgアップの大きなものですが、今回送っていただいたものは魚体が小さく、大きなものと身質も変わってくるので、それをどう活かそうか考えました。焼き物で使うよりもジューシーに仕上げたいと思ったので、揚げ物にしました。揚げ物は閉じ込めて 火を通す蒸し物に近いので、水分と旨味を逃さずに調理できます。その考えを元に、和食で幽庵焼というタレに漬け込んで、焼く料理がある のですが、アレンジして揚げ物にしてみました。

小ぶりなふぐでも揚げる事により、旨味と余分な水分を逃さず、しっとり柔らかく仕上げている。

食材を調理する際に、いつもどのようなことを心がけていますか。

水産物に限らず、最近食材のクオリティが上がってきているので、よりシンプルに素材を引き出すようにしています。大根にしても、昔は一度ぬかで湯がいて、それをさらして、大根の味を抜いた後に出汁を含ますというやり方だったんです。でも今は大根自体が美味しいので、ぬかで湯がくのを省いています。昔の技を踏まえた上で、手を抜くのではなく、そのものを活かすために、省くという感じでしょうか。

ご主人にとって魚介類は食材の中でもどのような位置付けでしょうか。

やっぱり主役ですね。お客様は家では食べられないものを求めていると思いますので、そういうものを仕入れています。魚は料理の幅が広いですよね。他の食材とも合わせやすいですし、可能性のある食材なので、お客様に喜んでいただきやすいと思います。

最後に、漁業関係者へのメッセージをお願いします。

もっと漁師さんと繋がりたいですね。直接獲っている方の話を聞きたいです。漁師さんもお店でどうやってお客さんが食べているのかを知るのも大事だと思います。そうすることでもっと料理人とコミュニケーションが取れると思います。顔を知ると、料理により気合も入りますしね。我々料理人は食材の魅力をお客様に伝えていく使命があると思っています。懸命に料理を作っていますので、共に頑張りましょう。

SPECIAL INTERVIEW

かわ原

川原浩二さん

大阪府大阪市北区豊崎2-4-21
TEL:06-6131-4668

兵庫の和食店や大阪の懐石料理店で研鑽を積み、2017年に独立。大阪・梅田で、築100年ほどの古民家を改装し、風情のある隠れ家的な佇まいを持つ「かわ原」をオープンさせた。

生産者×シェフ SPECIAL INTERVIEW